『あ、矢野さんだ。』
最初の一音を耳にした瞬間に分かってしまうピアノの音色。
ギターはエフェクターの音作りの雰囲気で誰が弾いているのかすぐ分かったりするんだけど
機械で音色を変える事の少ないピアノという楽器で誰が演奏しているのかが伝わってくると
いうのは本当にすごい事だと思う。
フェス出演や他ミュージシャンとの共演で名前はもちろん知っているけどアルバムを一枚通
して聴いた事はない、そんな人はきっと少なくないと思うんです。
僕自身も大泉洋さん、原田知世さん主演の映画『しあわせのパン』で流れていた"ひとつだけ"
という曲が大好きなのにアルバムはちゃんと聴いた事がなかった。
いつか聴こうと思いながらしばらく時間が経ってしまったんだけど、2015年の今年、矢野さん
のオリジナルアルバム5タイトルがアナログ盤で再発されるという発表があったのでこの機会に
と思い再発盤をレコードで聴いてみました。

過去作品5タイトルのうち『はじめてのやのあきこ』と『矢野顕子、忌野清志郎を歌う』の
2作品が最初にアナログ盤で発売されたんだけど、言うても矢野さんの音楽としっかり向き
合うのは初めてなので迷わず『はじめてのやのあきこ』を手にする事に。
レコードのカッティングを担当されたのが大滝詠一さんや山下達郎さんの作品も手がけられ
ているJVCのマスタリングエンジニア小鐵 徹さんだという事もアナログ盤で聴きたいと惹か
れたきっかけでもあったりしたんです。

もともとは2006年に発売。
当時30周年を迎えた矢野さんの入門編的な作品として発表されたアルバム。
槇原敬之さん、小田和正さん、井上陽水さん、忌野清志郎さんといったベテランの皆さんに
加え 、岸田繁さん ( くるり ) 、YUKIさん(ex . JUDY AND MARY)、上原ひろみさんのように
10代の方も聴いているようなミュージシャンの方々とセルフカバー曲 、書き下ろしの新曲 、
THE BOOMのカバーなど31分30秒という決して長くはない収録時間の中に短さを感じさせな
い素敵な共演がたっぷり収録されている。
どの曲も原曲はこれまでのアルバムに収録されていて、この作品では歌詞や演奏パートを変え
ながら新しく録音されているのが面白かった。
中でもYUKIさんが参加されている " ごはんができたよ " 。
原曲にある《お医者さんちのあっこちゃんにも》という歌詞。
これは実家がお医者さんだった矢野さん自身の事をあっこちゃんと歌ってる歌詞なんだけど、
はじめてのやのあきこの中では YUKI さんがこの部分を《 磯谷さんちのゆきちゃんにも 》と
自分の本名 『磯谷有希』に歌い替えられてたりする。
他にも、
《甘ったれのふうちゃん(原曲)》→《甘ったれのようちゃん(旦那YO-KINGさんのこと)》
《鼻ったれのかずちゃん(原曲)》→《鼻ったれのけいちゃん(プロデューサー篠崎恵子さん)》
と歌い替えられていたり。
こういう遊び心は聴く側にとって くすっと笑顔になってしまう。
アナログ盤に封入されている歌詞カードには原曲のままの記載になっているのもなんだか
いいなあと思ったりするんです。

そして先に書いた『しあわせのパン』でも流れていた忌野清志郎さんとの " ひとつだけ " も
改めて聴いてみてやっぱりよかった。
個人的には映画もすごく好きなだけに各シーンの想い出と一緒に重ねながら聴くと感じ方、
味わい方も変わってくる。
この曲も歌詞が一部変わっているので聴き比べながら探してもらうのも面白いと思います。

フジロック 、RISING SUN などの大きなステージでも グランドピアノ で演奏される姿は
とても優雅でダイナミック。
なのになぜか穏やかな空気を感じるのはとても不思議、
矢野さんの持つ一種の魔法のような物だなと思うんです。
本当は魔女なんじゃないかと本気で思っているという事はここだけの話。
written by freedom smile
■リリース情報
【アナログLP盤】 『はじめてのやのあきこ<数量限定アナログLP盤>』
発売:7月29日(水)
価格:3,000円+税 <収録曲(全7曲)
01.自転車でおいで
02.中央線
03.PRESTO(Acoustic Version)
04.ごはんができたよ
05.架空の星座
06.ひとつだけ
07.そこのアイロンに告ぐ
参加アーティスト:槇原敬之、小田和正、YUKI、井上陽水、忌野清志郎、上原ひろみ
【ハイレゾ配信】 『はじめてのやのあきこ<ハイレゾ配信>』
発売:7月29日(水)
価格:2,778円+税/単曲価格:463円+税
*「ごはんができたよ」は未配信